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Vol.05 株式会社日本資産運用基盤グループ 「運と縁が生まれる街から金融の構造を大きく変える」

2021.10.05

株式会社日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長 大原啓一氏

「運と縁が生まれる街から金融の構造を大きく変える」

 

– FinGATE テナントインタビュー Vol.05 –

 

街の再開発が進み、新しい情報・文化の発信基地として、そして資産運用・Fintech等の金融系スタートアップの集積地として注目されつつある日本橋兜町・茅場町。ここに今、金融系スタートアップの起業・成長を支援するインキュベーション施設「FinGATE」があります。現在、FinGATE BASE、FinGATE KABUTO、FinGATE KAYABA、FinGATE TERRACEの4施設が整備されており、約50社の金融系スタートアップが入居しております。

それぞれの会社の今と未来、そしてFinGATEや日本橋兜町・茅場町に寄せる想いと期待について、話を伺ってまいります。

第5回目は、金融機関の資産運用関連事業を裏側からプラットフォームとしてサポートする、日本資産運用基盤グループ(JAMP)の代表取締役社長である大原啓一氏に、今のビジネスモデルを考えたきっかけや、兜町・茅場町に期待するところなどを伺いました。

日本資産運用基盤グループの事業内容については、こちら。

 

ご経歴について教えてください。

大原 大学を卒業して野村資本市場研究所に入社した後、第2新卒として興銀第一ライフアセットマネジメント(現・アセットマネジメントOne)に転職しました。そして、27歳の時にロンドンへ転勤となり、8年間働きました。27歳から35歳までという、ビジネスパースンとしてはインプットの時期をロンドンで過ごしたことが、今の仕事に大きな影響を与えたと思います。

日本に帰国した後、マネックスグループとクレディセゾン、バンガードの3社から出資を受けてマネックス・セゾン・バンガード投資顧問を立ち上げ、個人向けにこれまでにない新しい資産運用サービスの提供に取り組んでいました。その会社の社長を退任した後、もう一度、起業にチャレンジしてみようと考えて立ち上げたのが、日本資産運用基盤(JAMP)です。

事業内容について教えて下さい。

大原 簡単に申し上げますと、日本の金融機関の資産運用関連ビジネスを裏側からサポートする仕事です。直近では、アイザワ証券が提携する地域金融機関や金融商品仲介業者(IFA)を通じて提供するゴールベース型ラップサービスの裏側のインフラとして、同社のサービス立ち上げや運営をご支援させて頂いています。

例えば、証券会社がファンドラップサービスを独自に提供する場合、お客様の契約データなどを管理するシステムを構築しなければならず、そこには莫大な費用がかかります。この手のシステムを、今までの日本の金融機関はすべて自前で揃えてきましたが、新しくシステムを構築する際のコストは言うに及ばず、それを保守して稼働させ続けるにしても、多額のランニングコストがかかります。このシステム自前主義が、日本の金融業界、資産運用業界の新規参入を阻んできたのは事実です。

また、今の日本にはこのようなシステムが多く存在し、十分にキャパシティもあるため、私たちはこれら既存のシステムを活用して、新しいサービスを展開する金融機関などに提供します。そうすれば、素晴らしいビジネスアイデアを持っているけれども、システム構築などにかけるお金が無くて新規参入できないという、新興金融機関にありがちな課題解決の一助になるはずです。今の日本の金融機関が抱えている課題を探し、それを解決するためのソリューションを提案する。これが日本資産運用基盤のメインの仕事です。

 

そのビジネスアイデアはどういう経緯で思いついたのですか。

大原 やはりロンドン勤務時代に経験したことがベースになっています。ロンドンで金融スタートアップを立ち上げる場合というのは、ほとんどが1人か2人でスタートさせます。日本のように10数名を集めてようやくスタートというのではないのですね。

なぜ1人か2人でスタートできるのかというと、外部のサポートが非常に充実しているからです。

日本で金融スタートアップを立ち上げようとしたら、仮に10億円を調達できたとしても、恐らく大掛かりなシステムを購入し、自前で金融事務部門を運営したりしていたら、あっという間に使いきってしまうことも十分あり得ます。そのうえビジネスが失敗に終わったら、借入金だけはしっかり残りますから、それを何とかして返済しなければなりません。つまり、起業そのものが極めてリスキーなのです。

本来、ビジネスで成功するためには、トライ&エラーの数が大きな意味を持ってきますが、日本では失敗が許されないのです。やる気のある人には成功するまで何度でもトライ&エラーできるような環境をつくらなければなりません。

それと同時に、会社を立ち上げたのは良いけれども、システムや事務をどう回すかということばかり思考が費やされ、肝心のビジネスに目が向かなくなったら、それは本末転倒です。そこはすべて外注することで、経営者がビジネスに専念できる環境をつくりたい。そう考えているなかで、今のビジネスモデルの必要性を改めて感じたのです。

会社を設立して3年半。ビジネスは予定通りに進んできましたか。

大原 この3年半で確立したのは、能動的に業界動向を分析し、これから必要になるのは何かを見極め、それを金融機関のマネジメント層に提案させていただくという流れです。先ほどのラップサービスもそうですし、地域金融機関の有価証券運用のサポートなどもそのひとつです。

そもそも有価証券運用は地域金融機関にとって本業ではありませんし、決してこの分野に強いわけではないので、そこを私たちが丸ごとサポートさせていただいております。今年5月には富山銀行との間で、同行が運用している約1300億円の有価証券運用について、アドバイザリー契約を締結させてもらっています。

このように、既存の金融機関にとって本業ではない部分を私どもにアウトソーシングしていただき、本業に専念できる環境を整えることによって、地域銀行など地域金融機関ならではの強みに特化したビジネス展開が出来れば、新たな成長シナリオを描ける可能性が高まります。

私がJAMPを立ち上げた3年半前には、このような話をしても、「おっしゃることは正しいのですが、それを今の日本の金融業界で行うのは難しいですよ」という答えしか返ってきませんでした。長年にわたって染み付いた自前主義を捨てることが出来なかったのです。

しかし、今では地域金融機関もアウトソーシングを積極的に活用し、本業に注力できるよう、組織と事業内容の再構築を始めるところが散見されるようになりました。正直、わずか3年という短い時間でここまで金融業界が変化するとは、会社を設立した当初は想定できませんでした。その意味では、私たちのビジネスモデルで事業参入したタイミングが、非常に良かったのかも知れません。

 

FinGATEという場に対してどのような期待を抱いていますか。

大原 会社を立ち上げたばかりの頃は、恐らく大半の経営者は不安だと思います。だからこそ情報を求めますし、そのためには広義の金融業界が集まっている場所に行くことが肝心です。
FinGATEはその名の通り、金融系スタートアップの集積地になっていますし、入居している会社の人たちは皆、自分のビジネスを軌道に乗せるために苦労もしています。困った時にはお互い様ということで情報や知恵を出し合える場所ですし、そういう人間関係を築ける場であり続けて欲しいと思います。

兜町・茅場町という街にはどのような期待を抱いていますか。

大原 私がJAMPを立ち上げたばかりの頃、困ったことがあった時に相談に乗ってもらっていた方がいるのですが、その方がよく言っていたのは、「経営者は出歩かなければ駄目だ。とにかく人と会え」ということでした。
今はコロナ禍ということもあって、積極的に外出をお勧めしにくい環境ではありますが、外出すれば、知り合いにばったり会って、そこから新しいビジネスの話が生まれる可能性があります。
外出しなければ何も生まれません。その方が言うには、経営者にとっては「運と縁」が大事だということでしたし、それは私自身も納得しています。
普通に街を歩いていても、偶然の出会いはなかなか無いものですが、FinGATE界隈、つまり兜町・茅場町界隈では、少なくとも私の経験で申し上げると、偶然の出会いが結構たくさんあります。その場で仕事の相談を受けることもあります。兜町・茅場町には運と縁が生まれる街であり続けて欲しいですね。

ご協力ありがとうございました。

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