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Vol.03 株式会社Handii 「情報のデジタル化で新しい金融を切り拓く」

2021.06.10

株式会社Handii CEO 柳志明氏

「情報のデジタル化で新しい金融を切り拓く」

 

– FinGATE テナントインタビュー Vol.03 –

 

街の再開発が進み、新しい情報・文化の発信基地として、そして資産運用・Fintech等の金融系スタートアップの集積地として注目されつつある日本橋兜町・茅場町。ここに今、金融系スタートアップの起業・成長を支援するインキュベーション施設「FinGATE」があります。現在、FinGATE BASE、FinGATE KABUTO、FinGATE KAYABA、FinGATE TERRACEの4施設が整備されており、約50社の金融系スタートアップが入居しております。

それぞれの会社の今と未来、そしてFinGATEや日本橋兜町・茅場町に寄せる想いと期待について、話を伺ってまいります。

第3回目は、法人カードのクラウド型発行・管理サービス「paild(ペイルド)」を提供している株式会社Handiiです。なぜこのサービスを思いついたのか、このサービスを普及させていく先にどのような世界観を見ているのか。CEOの柳志明さんにお話を伺いました。

Handiiの事業内容については、こちら。

ご経歴について教えてください。

  東京大学~大学院にて、物質科学を専攻していましたが、研究者はとてもクローズドな世界で、そのなかにいても将来に限界があるのではないかと思うようになりました。

また、親からは「どの国でも生活できるようにしなさい」と言われ育ってきたこともあり、改めて将来のことを考えた際、グローバルで活躍できる外資系企業で、なおかつ様々な業界に関わることができる金融業界が自分には合うのではないかと考え、2011年に外資系金融機関であるJPモルガン証券投資銀行部に入社し、2017年8月に株式会社Handiiを創業しました。

金融機関ではどのようなお仕事をされていたのですか。

  JPモルガンの投資銀行部門に在籍しておりました。グローバルに活躍できるという点では申し分のない環境で、それこそ地球の裏側にいる社員と、ある日突然チームを組んでプロジェクトを推進させることも、たびたびありました。

入社後は電機メーカーのクライアントを担当するようになりましたが、中国・韓国・台湾などの電機メーカーの台頭により、日系電機メーカーが非常に厳しい状況に追い込まれているのを間近に感じる機会となりました。

この経験を通じ、2つの気付きを得ることが出来ました。

ひとつは、たとえ大企業であったとしても、適切な経営が行われないと競合に追い抜かれていく可能性があるということ。

そしてもうひとつは、日本を代表する大手電機メーカーが衰退していく状況を見て、このまま日本の経済力が後退し続けたら40年後、50年後の自分たちが置かれる経済的環境が相当厳しくなるのではないかということでした。
そこで大企業に依存せず、かつ自分の力でこの状況を変えられないものかと、いろいろ考えた末に浮かんだのが、起業することでした。

なぜ金融領域で起業しようと思ったのですか。

  金融という仕事が好きだったからです。当社は2017年8月に設立したのですが、実は当初、金融とはほとんど関係のない、フィットネスアプリの会社を立ち上げようと思っていました。

その年の12月に、ベンチャーキャピタルのニッセイ・キャピタルが主催しているアクセラレーションプログラムである「50M」に採択され、ビジネスの実現化に向けて動き出したのですが、そのプログラムが終了した時、「フィットネスアプリはどうも違うのではないか」と思うようになり、ピポットすることにしたのです。

起業するためには自己分析が欠かせません。なぜそれを自分がやるのか、自分は何を持っているのか、辛い状況に追い込まれても続けられることは何なのかを自問自答することで、どのようなビジネスで起業するかが固まっていきます。
プログラムの参加中、そのようなことを考えているなかで、結局、私は金融が好きなんだということに気付きました。そこで急遽、フィットネスアプリから金融領域に舵を切ったのです。

株式会社Handiiは法人カードのクラウド型発行・管理サービス「paild(ペイルド)」を提供されています。金融領域において、この分野を選んだ理由を教えて下さい。

  法人ウォレットサービスを思ったのは、自分自身の体験があったからです。法人用のクレジットカードは、カードを発行するまでに与信審査があったり、さまざまな書類作成作業があったりなど事務処理が煩雑で、しかも利用限度額が低いという問題がありました。

この問題を解決できる仕組みを世の中に提供したいと思ったことと、このサービスはさまざまな産業と繋がることが出来るという点で、まさに私自身が金融に興味を持ち続けている理由と重なり、法人カードのクラウド型発行・管理サービスを思いついたのです。

具体的にどのような内容のサービスになるのですか。

  「paild(ペイルド)」というのがサービス名です。法人カードは与信枠が低めに設定されているので、すぐに限度額になってしまい、カードを止められてしまうというデメリットがありました。

一方、「paild(ペイルド)」は前払い式にすることで、与信審査による利用限度額という概念を取り払いました。これを現場で活用することにより、立替経費を削減でき、経費の精算処理にかかっていた時間、コストなども最小限に出来ます。

クライアントとしては、非常に伝統的なビジネスモデルを持った会社もありますし、クラウド会計を使い慣れたITスタートアップにも利用していただいています。

サービスをつくり上げるなかで苦労したことはありますか。

  このアイデアを着想してから実際にプロダクトをリリースするまでに結構時間がかかってしまいました。

着想したのが2018年8月で、その年に1回目の資金調達を行いました。そして開発のためのエンジニアを雇い、2019年2月からFinGATEに入居して、同年6月にもう1度、資金調達を行いました。この2回の資金調達で合計4億円を集めることが出来、開発のための資金的な余裕は出来たのですが、同時に「前払式支払手段」に必要なライセンスも取得しなければならず、これに結構時間を取られました。

御社が実現したい世界観を教えて下さい。

  当社のミッションは「新しい金融を切り拓く」です。では、新しい金融とは何か、ということになるのですが、昔と今とで大きく違うのは、あらゆる情報のデジタル化が進んだことです。

たとえば喫茶店のような小さい規模の飲食店は、昔だと大抵、現金商売でした。それが今では現金のやりとりは最小限になり、ほとんどがキャッシュレス決済へと変わりました。店員はレジを開けなくても、その日の売上情報が分かる時代になりつつあるのです。

金融はある意味、情報産業ですから、お金の流れがデジタル情報化されれば、それを用いて新たな付加価値を提供できるようになります。その一翼を、私たちは法人カードのクラウド型発行・管理サービスで担っていこうと考えています。

FinGATEに対してどのような期待を持っていらっしゃいますか。

  新しい金融サービスを実現する会社の聖地になって欲しいと思います。

スタートアップの良いところは、同じ会社ではない人でも助けてくれるところだと思います。だから、この場所に大勢の、いろいろな会社の人たちに集まってもらいたい。それはまさに知見の集合体です。

FinGATEをスタートアップの集積地にして、皆で協力し合いつつ、日本という国をアップデートできればと考えています。

日本橋兜町・茅場町という街に対する期待感はいかがですか。

  思いがけない出会いに期待しています。

当社は、高校の同級生でもあり、前回このインタビューを受けていたDymonAsiaの山下(山下氏のインタビュー記事はこちら。)からたまたま平和不動産を紹介されて入居しましたが、さまざまな人との縁や出会いが想像していなかった結果を生み出します。

証券の街というイメージから脱却してさまざまなスタートアップが集まることで、たとえば当社であれば異業種コラボでキャッシュレスサービスを実現できれば面白いと思います。

世の中を変える、ワクワクできる街になってもらいたいですね。

ご協力ありがとうございました。

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