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Vol.02 Dymon Asia Capital Japan株式会社 「自国の運用者を育てることが日本のプレゼンス向上につながる」

2021.05.07

Dymon Asia Capital Japan株式会社 代表取締役 山下慶祐氏

「自国の運用者を育てることが日本のプレゼンス向上につながる」

 

– FinGATE テナントインタビュー Vol.02 –

金融系スタートアップの起業・成長を支援するインキュベーション施設「FinGATE」。現在4施設が整備されておりますが、東京証券取引所の並びに立地するFinGATE KABUTOには、国内外資産運用会社が多く入居しております。今回お話を伺ったDymon Asia Capital(“ダイモン・アジア”)は、シンガポールに本社を構えるアジア発祥のオルタナティブ運用会社として知られています。

その日本法人、Dymon Asia Capital Japan株式会社代表取締役の山下慶祐氏に、日本におけるビジネス展開などを伺いました。

ダイモン・アジアの事業内容については、こちら

山下さんのご経歴から教えていただけますか。

山下  米国の大学を卒業後、米系投資銀行に入社し、M&Aや資金調達のアドバイザリーを担当しました。ロンドン支社でも2年弱勤務して、東京に戻ってきたのが2015年末。それから、外資系運用会社の日本法人立ち上げに携わり、2017年末からシンガポールに拠点を置くダイモン・アジアに移って今に至っています。

ダイモン・アジアはオルタナティブ運用会社ですが、もともとそういう運用に興味があったのですか。

山下  いえ、運用ビジネスに関わりたかったというよりも、日本と海外の橋渡しをしたかったのです。米国の大学で学び、米系の金融機関で働いている時から感じていたことなのですが、日本は世界に冠たる経済大国であるにも関わらず、自分たちの良さを海外に伝えられていないところが多々見受けられたので、自分の強みを生かして何とか出来ないものかと考えていました。

たまたま知人を通じて、ダイモン・アジアの創業者と知り合う機会があり、彼が日本に進出したいと言っていたので、良い機会だと思ってダイモン・アジアに入社しました。

弊社では入社後、シンガポールの本社に1年半ほど勤め、2019年4月に東京オフィスを立ち上げました。

東京オフィスを立ち上げて2年。ビジネスは予定通りに進んできましたか。

山下  日本は世界的にも依然として経済規模は大きい方ですが、金融においてガラパゴス化しているところも多く、独立系の運用会社が東京でビジネスを軌道に乗せるために、直面するハードルも少なくありません。

たとえば金融の世界は欧米が先駆けだからということもあるのかも知れませんが、日本の投資家は欧米の運用会社に運用を任せたいという意識が根強くあります。

一方、同じアジアの香港やシンガポールだと、自国の運用会社に運用委託するという気持ちが少なからずあります。運用会社というのは投資家がいないと成り立ちませんので、自国の運用者をサポートすることによって、優秀なマネジャーを育てるという意識・システムが他国では一定程度確立しているように見受けられます。

ダイモン・アジアの強みはどこにあるのでしょうか。

山下  私たちはアジアに強みを持つ会社です。アジアには多くの国があり、言語や文化が多様です。当然、国が違えば運用手法・アプローチも違ったものになりますので、私たちはアジア各国の市場に精通した運用者を採用し、アジアに根差した、総合的なオルタナティブ投資の運用会社を目指しています。

現在、シンガポールを本社として、香港と東京に主要オフィスを構えておりますが、これからのアジア地域の成長性を考えると、やはり中国のプレゼンスは高まっていくだろうと考えておりますので、近い将来上海にもオフィスを立ち上げる予定です。

運用に関して申し上げますと、弊社はヘッジファンド戦略だけでなくプライベート・エクイティ戦略も持っており、公開市場・非公開市場双方におけるオルタナティブ投資戦略を提供しております。両戦略ともアジアに特化しており、ヘッジファンド戦略については、アジアを主戦場とした各ポートフォリオ・マネジャーが株式や為替、債券といった金融商品を通じて多様なリターンを追求する、プラットフォーム型の運用を行っています。

日本の資産運用ビジネスにはどのような課題があると考えていますか。

山下  私は日本だけでなく、アジアその他地域の運用者とお話しさせていただく機会も多いのですが、日本は、運用者にとっての選択肢が狭まってきていると感じることが少なくありません。運用者にはそれぞれ得意分野があり、市場中立型の運用、少数銘柄への集中投資など、その運用手法は多岐にわたるものなのですが、日本の場合、新規参入する運用会社の数が他のアジア地域と比べても少ないこともあって、どうしても運用の幅が狭くなってしまいます。これは課題のひとつですね。

貴社を通じて資産を運用している投資家はどういう人たちですか。

山下  多くが機関投資家です。ただ、プライベート・バンクなどを通じて一部、富裕層の資金も運用しています。香港やシンガポールではプライベート・バンクやファミリーオフィスを通じて、運用会社に資産を預けるシステムが充実しつつあります。

日本でも将来的には個人の資産運用の選択肢を広げてもらうという観点から、機関投資家以外の投資家にも弊社のような独立系運用会社の商品が提供出来ればと思っているのですが、実現するためには様々なハードルがあり、それを今後どうクリアしていくか画策中です。

基本的に本邦投資家の運用ニーズを見ていると、どちらかというと市場環境が急変した場合でも、着実な収益を実現してくれる運用を求める傾向が強いと思います。その点、絶対収益の実現を目指すヘッジファンド戦略は、本邦投資家のニーズに合致している戦略だと思います。それだけに、少しでも早くこうしたハードルを乗り越えて、日本でのビジネスを定着させていきたいと考えています。

東京が国際金融都市としての地位を確固たるものにするには何が必要でしょうか。

山下  2008年のリーマン・ショック前まで、アジアにおける金融ハブといえば東京でした。そこにはアジア各国から多くの資産運用会社が集積していましたが、今では香港やシンガポールにその座を奪われつつあります。

ただ、アジア各国を取り巻く幾つかの問題は、東京にとって金融ハブとしての地位を取り戻すチャンスだと思います。だからこそ、先ほどからお話しさせていただいている通り、自国の運用者を育てる必要があるのです。日本が国際金融都市になれない理由として、言語面や、税制、各種規制などが挙がりますが、優秀な運用者が育つ環境が少ないということも解決しなければならない課題の一つです。

運用者を育てるために、自国の投資家が運用者に対して、積極的にサポートすることも必要です。優秀な運用者が日本から生まれれば、世界から運用資金が再び東京に集まってくると思います。

最後にFinGATE、そして日本橋兜町・茅場町に対する山下さんの想いをお聞かせ下さい。

山下  弊社がFinGATEに入居したのは今から約2年前のことですが、当時に比べて資産運用業界におけるFinGATEの認知度が上がってきていることを実感しています。私たちが入居した時は、FinGATE全体で入居している会社数が10社程度だったと記憶しているのですが、今では約50社に達しています。私たちのように、日本への進出を目指している海外資産運用会社が、入居先オフィスを検討する際、FinGATEは以前は「数あるサービスオフィスの中の一つ」という位置づけでしたが、最近では「FinGATE」の名前が最初に挙がるケースが増えていると思います。

日本橋兜町・茅場町という街についても、大手町や東京駅へのアクセスの良さという立地面での強みに加え、最近では、飲食店の集積等により新しい賑わいが創出され始めていることをひしひしと感じております。これからもこの街が資産運用会社や金融系スタートアップの集積地であって欲しいですね。

ご協力ありがとうございました。

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